GPCRは体内の組織や細胞に存在する内在性膜タンパク質のスーパーファミリーです。あらゆる生体内反応に影響を及ぼすシグナル伝達経路に関係し、様々な疾患や障害に関与するため、医薬品開発において重要な標的となります。
現在市販されている医薬品の約34%がGPCRを標的としており、世界のマーケットシェアは約27%に相当します。またGPCRは約400個の受容体*を有する最も大きなヒト膜タンパク質ファミリーを形成し、そのうち224個は未だ探索されておらず、多くの創薬可能性を秘めています。
*非嗅覚の受容体
GPCRを標的とする創薬の現状の課題
現代医学において最も重要な医薬品標的の一つであるにもかかわらず、GPCRを特定して標的とする創薬は、従来の化合物をランダムにスクリーニングするアプローチと比べて難易度が高いと考えられてきました。細胞膜から抽出されると不安定になるという性質上、これまではGPCRを細胞膜から抽出してマッピングを行うことは難しく、しばしば立体構造解析の妨げとなってきました。
当社のソリューション
当社グループの特許技術である、StaR®技術を活用したSBDDプラットフォームにより、従来困難であったGPCRを標的とした低分子化合物、ペプチド、抗体治療薬の創薬が可能になりました。
当社グループの技術は、GPCRを標的に選択的で親和性の高い候補薬の創出を実現しました。StaR®技術は、3次元構造を維持したままGPCRを細胞膜から抽出することができる現在唯一の技術で、親和性の低いものも含めて複数の低分子とGPCRとの複合体の構造を検証できるようになりました。
既に30種類を超える受容体のX線構造解析に世界で初めて成功しており、さらにそれらの受容体が低分子薬と結合する300以上の構造を解明しました。これはSBDDを進める際の鍵となります。GPCRファミリーの多くは、既存の技術では薬物の分子設計が困難な対象でしたが、当社グループの技術により新たな候補薬のデザインが可能になります。
当社グループのアプローチは、GPCRを標的とした安全性と選択性のより高い医薬品の開発機会を大きく拡げるものです。すなわち、従来の手法で創られた化合物にしばしばみられる選択性の低さ、好ましくない薬物動態学的プロファイル、毒性等の課題を克服することができると考えています。このアプローチにより、課題を克服した化合物や創薬困難な標的に対する化合物が生み出され、科学雑誌で数多く紹介されています。
o アゴニスト結合型立体構造に熱安定化されたGPCR構造および内因性リガンド(グレー)との共構造
o 我々独自の強力なプラットフォーム技術により、X線結晶構造解析、クライオ顕微鏡、バイオフィジカルマッピング™を用いたGPCRの三次元構造およびリガンドとの共構造の特定が可能