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Sosei HeptaresとPharmEnable社のAI創薬における共同研究が前進: 創薬困難だったGPCRに対して新規のヒット化合物を生成

By Sosei Heptares and PharmEnable | Jan 25, 2022

人工知能(AI)は、創薬においてますます重要な役割を担いつつあります。それは、神経疾患に関連するペプチド作動性Gタンパク質共役型受容体(GPCR)をターゲットとしたSosei HeptaresとPharmEnable社の共同研究が大きく進展したことからも実証されます。本共同研究ではGPCR に関するSosei Heptaresの専門知識と PharmEnable 社の AI 技術を融合することで、通常よりも大幅に短い時間で成果を得ることができました。当社グループの創薬部門ヴァイス・プレジデントのMatt Barnesと、PharmEnable社創薬部門ディレクターのJames Daleに詳しい話を伺いました。

 

ペプチド作動性GPCRをターゲットとした創薬には従来どのような課題があったのでしょうか?

Matt Barnes: 最初に重要になるのは、ペプチド作動性GPCRの天然アゴニストリガンドは大きく複雑なペプチドであり、これを神経疾患の治療薬として適した物性を持った低分子特性でブロックすることは、非常に難しいということです。

James Dale: 従来、ヒット化合物の同定は大規模な物理的スクリーニングライブラリーのハイスループットスクリーニング、仮想スクリーニングと対象分子の購入、市販のライブラリのスクリーニングによって行われてきました。しかし、これらのライブラリの中から最適化できる化学物質を見つけるには多くの場合、多大な時間と費用がかかります。

Matt Barnes: 加えて今回のターゲットは、中枢神経系(CNS)に存在するため、中枢移行性の高い化合物を見つけるという新たな課題も生じます。そこで、PharmEnable社との共同研究ではより技術的なアプローチを用い、より創薬確率が高いと考えられる化学空間から、ターゲットに適合し、その他の創薬のプロセスに耐えうる分子を探索することを目指しています。

 

Sosei HeptaresとPharmEnable社はこれらの課題に対し、どのような補完関係があったのでしょうか?

Matt Barnes:  当社グループは、世界をリードするGPCRをターゲットとしたStaR®技術と構造ベースドラッグデザイン(SBDD)により、選択したターゲットに関する豊富な構造およびリガンド結合情報を蓄積しています。研究チームはこのターゲットに対して有望な分子をいくつか創製していましたが、前臨床試験に進めるためには、神経疾患治療薬として適した特性の化合物を同定する必要がありました。

James Dale: PharmEnableのプラットフォームは、化学空間における未開拓な部分を発見し、現在困難とされているターゲットに対する新規かつ特異的なヒット化合物を見出すことができます。まず、PhramEnableのchemSAILORとSosei HeptaresのStaR®技術およびSBDDの組み合わせにより、ターゲットが必要とする化学空間を同定します。次に、PharmEnableのchemUNIVERSEが、既知の生物活性分子と類似せず、市販もされていない合成可能な新規分子へのアクセスを提供します。そして、PharmEnableのchemSEEK AI、ケムインフォマティクス、コンピュータ支援薬物設計(CADD)ツールとSosei Heptaresの最先端のGPCRスコアリング手法を組み合わせ、de novo生成分子ライブラリの中から合成に適した分子を同定します。

このアプローチは、高度な医薬品化学の専門知識と最先端のAI/計算手法を組み合わせて、化学空間の新しい領域、おそらくこれまで医薬品リガンドが同定されていない領域を効率的にサンプリングするものです。

 

この共同研究によって、これまでにどのようなインパクトがありましたか?

Matt Barnes: PharmEnable 社の技術を用いて、ターゲットに関連する化学空間を効率的かつ迅速に探索することにより、新規のヒット化合物同定が大幅に加速されました。合成するための少数の分子を共同研究チームが選択した後、この GPCRターゲットに対する新規低分子を同定しました。現在、それらはヒット化合物からリード化合物への最適化が進んでいます。

 

この共同研究の次のマイルストーンは何でしょうか?

James Dale: 私たちがターゲットとする疾患に関連する、複雑な生化学的検証に耐えうる選択性を持つヒット化合物の最適化、および臨床試験を行うのに十分な有効性と安全性が期待できる、最適な薬理プロファイルを持つ化合物を得ることです。